今回登場のことぶきさんは、80年代よりコンピュータを導入した音楽を作り始め、2度に渡るP-MODELへの参加やさまざまなレコーディングやツアーにて活躍された人。詳しくはプロフィールを見て頂くとして、テクノ/ニューウェィブ世代にはピンとくる人も多いはず。今年6月、ソロ音源としては初のアルバム『mosaic via post』を発表。この作品は現在住の札幌と、海外や東京のアーティスト達と音源を行き来させて完成させたと言うが、意外にもその手段は郵便だったという。さらに、行方不明と言われたアジア、アフリカ旅行時代の話からパーソナルに迫りお届けします。 ----コンピュータを取り入れた音楽作りというのは、いつ頃から始めたのでしょうか。 K:学生のときに、ちょろちょろもて遊んでいたんですけど、最初のMSXなどの時代ですね。仕事ではアーケードゲームにそういった自動演奏を使っていましたね。15年くらい前でしょうか。 ----ことぶきさんにとってコンピュータの面白さ、醍醐味ってなんでしょうか。 K:別に、唯の道具だから、なんだろうか……ずっとコンピュータでしかやっていないからねぇ。そういう意味では皆と“セーの”でやったりすると緊張しますね(笑)。というかそういうのやりたいんですけどね(笑)。僕、今は札幌に住んでるんで、なかなかそういう機会がなくって。たまに“ワン、ツー”とかやると燃えますよね。 ----そうですか。例えばP-MODELにも2度に渡って参加されるんですけど、デジタルというか、そういうイメージがあるんですよね。 K:P-MODELでコンピュータを使い始めたのは、平沢さんのソロを経て復活したときからですね。それまでは、一切、同期とかもなかったですね。こういっちゃあ何ですけど、いわゆるコンピュータは、楽器についてるシーケンサー程度しか使っていないと思うな。だからデジタルっぽいイメージってあったのかもしれないですけど、少なくともライブは全部人力ですからね(笑)。だからループっぽいのをバックにした演奏もあったんですけどそのシーケンスってカセットテープですからね(笑)。でも、これが普通 だったと思いますよね。 ----それでは今年の6月に出た『mosaic via post』というアルバムについて聞かせて下さい。まずは出発点からいきましょう。 K:それまでPhnonpenh Model(プノンペン・モデル)という、P-MODELのにせ物バンドみたいなものを作っていたんです。去年、渋谷でライブをやり、カラオケルームみたいなところでの打ち上げの話からですね。その時の出席者が全員キーボーディストで、具体的に言うとライオンメリイ、MOMOくん、福間創くん、山口慎一(YAPOOS)、斉藤哲也なんか。そこで斉藤君が「じゃあ、ことぶきさんが皆の音源を集めて一枚作らないとだめですよ!」なんて言い出して(笑)。それで始まったと思うんです。取りあえずそこにいた人は全員参加。さらに僕が「オ・ン・ゲ・ン・モ・ト・ム……」という文章を作ってミュージシャン仲間にメールで送って音を集めて、という感じです。 ----へえ、面白いアイディアですね。 K:一応条件としては、今、ネットワーク云々ってどこかにサーバを立ち上げて、そこに突っ込んでというやり取りが一般だと思うんですけど、郵便に限定しようと(笑)。だから郵便が新しいぞ、と『郵便ポストミュージック』って名付けて。結局、皆インターネットとか使ってるんだけど、よくよく考えて、大量の情報送るときの待ってる時間やトラブルなんかのストレスを考えたら郵便って速くて便利だなあって(笑)。例えばデジタルネットワークもだんだん速くなってるとは思うんだけど、それに比べて郵便のスピードの方が全然速いなあって思って。札幌に住んでいても、ついこの間、翌朝便(翌朝10時郵便)ができたと思ったら、もう当日届く便(新特急郵便)があるし。『mosaic via post』はアメリカやヨーロッパともやり取りしてるんだけど、いわゆる時差を考えたら出す前に着いちゃったりするんだよね(笑)。それって断然速い、これからは郵便だって(笑)。デジタルのネットワークが1000倍にでもなれば別なんだろうけど、ヨーロッパなんかじゃ今でも普通に電話線使ってるし。料金やスピードを考えたら全然グローバルじゃねぇなぁ、なんて考えたりして。それに比べたら郵便だろうって。 ----郵便なんて随分ユニークなやり方だなって思ったんですが、実は実用性からだったんですね。 K:僕の場合はずっとそんな感じですよ。今、インターネットって旬な感じがしないじゃないですか。旬な感じがして尚かつ速いというのがスピード感っていうか、自分の感覚としてやる気が起こるというか。結局モチベーションの問題だから。理屈をつけて、それが嘘でもどうやって自分にやる気を起こさせるかってことだから。それを考えたら少なくとも今、インターネット以外の方がたくさんあるというか……。しまった、今、インターネット媒体の取材でしたね(笑)。しかも当たり前になっちゃって、皆で“セーの”、の方がドキドキするのと郵便ってのが同じなのかも。そういえば、この間、何人かで話してて、子供の頃「相手の目を見て話しなさい」って言われたことってあると思うんだけど、実際は誰もそんなことしてないって(笑)。皆、よく目を見て話しができて凄いな、なんて思っていたみたいだけど(笑)。やっぱり違ったって事ってよくあるじゃない。例えば、メールで仕事の依頼や質問なんかを出してて中々返事が返ってこなくてどうしようって時、その人に電話したら方が早いなんて話(笑)。意外と気がつかないところに盲点があって、忘れがちなんだよね。 | ||||
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2002年11月、インタビュー:中島儀幸 |